私は竹田泰淳の妻武田百合子の旅行エッセイが好きです。特に『犬が星見た ロシア旅行』――あれを読んで以来、シベリア鉄道に乗って極東から泰西へ身を運ぶことに強いあこがれを抱くようになりました。彼女の文は思ったことを気のままに書き綴ったものですが、それでいてきりりと締まっています。このような自然体の文章に惹かれました。
まあ、このような旅行記は好きですが、世の中に求められている旅行記ではありません。「タイパ」という現代社会の価値観が「無駄」を駆逐しつつある時代に、こうした旅行エッセイは贅沢すぎるからです。
というわけで、現代人であり現代社会に生きる私が目指すべき旅行記は、効率よく読むことができる旅行記です。
わかりやすい構成で、何がどこに書いてあるか読者がすぐに発見できるような旅行記を書くためのヒントを備忘録的にまとめてみました。
旅行記を書く際に準備することや着眼点
旅行記を書く際の準備や着眼点は、出発前・旅行中・帰宅後の三段階で整理すると効率的です。この流れを意識して準備すれば、旅行記は「行った場所の記録」から「読者が行きたくなる記事」に変わります。
出発前
出発前には、旅先の概要や特徴を把握し、記事に盛り込みやすいテーマを決めます。地域の歴史や文化、観光名所、季節のイベントを事前に調べておくと、現地での取材がスムーズになります。また、移動手段や宿泊先、訪問予定地の営業時間、料金などもメモしておくと後で正確な情報が書けます。写真撮影や動画撮影のための機材の準備、充電器や予備バッテリーの用意も忘れないようにします。
旅行中
旅行中は、写真や動画を多めに撮影することが重要です。風景や建物だけでなく、人々の様子、食事、看板、チケットなど細かい部分も記録しておくと記事の臨場感が増します。五感で感じた情報をメモする習慣をつけると、後で文章に深みが出ます。現地の人との会話や偶然出会った出来事は、旅行記の魅力的なエピソードになります。混雑状況やベストな訪問時間、アクセスのしやすさなどもチェックしておきます。
帰宅後
帰宅後は、撮影した写真や動画を整理し、日付順やスポット別に分類します。現地で書いたメモを見ながら、旅行記の骨組みを作ります。この段階で、単なる時系列の記録ではなく、テーマやストーリー性を持たせる構成に意識を向けると読者の興味を引きやすくなります。また、現地で得た情報を公式サイトや信頼できる情報源で再確認し、記事の正確性を担保します。
旅行記のテンプレート
旅行記を書く側もタイパを追求する必要があります。テンプレートを作成することは、一から作成する手間を省き、誰でも同じ品質と形式で効率的に作業を進めることを可能にします。大量生産方式万歳!
タイトル
「地域名+体験内容+魅力的な要素」を組み合わせたタイトルは、読者が記事内容を一目で理解でき、検索エンジンにも強い構造になります。
まず「地域名」は、読者が目的地を明確にイメージできる要素です。例として「沖縄」「京都」「北海道・小樽」など、地名を入れることで検索キーワードとしても有効になります。
次に「体験内容」は、記事の主題やテーマを示す部分です。旅行記なら「絶景ドライブ」「街歩き」「温泉巡り」「食べ歩き」などが該当します。これにより、読者は記事から得られる情報や感動の種類を予想できます。
最後に「魅力的な要素」は、記事をクリックしたくなる付加価値となる言葉です。「おすすめスポット巡り」「穴場グルメ」「インスタ映え写真スポット」「地元民しか知らない観光ルート」などがあり、他の記事との差別化を図ります。
例えば「沖縄・石垣島の絶景ドライブ体験とおすすめスポット巡り」というタイトルでは、「沖縄・石垣島」で目的地を明確化し、「絶景ドライブ体験」で旅のテーマを提示し、「おすすめスポット巡り」で実用性と魅力を補強しています。こうした構造を意識することで、読者の興味を引きながらSEOにも効果的なタイトルが作れます。
導入文
旅行記の導入文で「どこへ、なぜ行ったのか」を簡潔に説明することは、読者の関心をつかむうえで非常に重要です。冒頭で行き先を明示することで記事の方向性がはっきりし、読者は自分の興味や旅行計画と照らし合わせやすくなります。また、なぜその場所を選んだのかという背景を加えることで、記事に個性や説得力が生まれます。たとえば「以前から憧れていた絶景を見たかった」「家族旅行でゆったり過ごせる場所を探していた」「現地の食文化を体験したかった」など、動機を具体的に伝えると読者は筆者の旅に共感しやすくなります。
さらに、この旅行記を読むことで読者が何を得られるのかを明確に提示すると、記事の価値がはっきりします。たとえば「実際に訪れてわかったおすすめスポットやルートを紹介します」「初めてでも迷わないアクセス方法とモデルコースを解説します」「現地でしか味わえない料理や季節の風景を写真付きでお伝えします」といった形です。これにより、読者は「この旅行記を最後まで読めば、自分の旅にも役立つ情報が手に入る」と理解し、記事を読み進める動機が強まります。
この2つの要素(行き先と理由、得られる情報)を導入で押さえることで、旅行記は単なる感想文ではなく、読者にとって有益で魅力的な記事に変わります。
旅の概要
旅行記の本文に入る前に「旅の概要」を説明する部分では、旅行期間、同行者、移動手段、宿泊地といった基本情報を簡潔かつ具体的にまとめることで、読者が旅の全体像を素早く把握できます。
まず「旅行期間」は、日数や季節を明示することが重要です。例として「3月下旬の2泊3日」や「紅葉が見頃を迎えた11月中旬の4日間」などと書くことで、旅の雰囲気や見られる景色の条件が読者にも伝わります。
「同行者」は、旅のスタイルを推測できる情報です。家族旅行なら子どもや高齢者への配慮が必要な行程、一人旅なら自由度の高いプラン、友人同士ならアクティブな活動が中心など、同行者によって旅の楽しみ方や移動ペースが異なります。
「移動手段」は、自宅から目的地までのアクセスと現地での移動方法を分けて書くとわかりやすくなります。例として「羽田空港から飛行機で〇〇空港へ到着後、レンタカーで移動」「新幹線で〇〇駅まで行き、現地では路線バスと徒歩で観光」などです。
「宿泊地や拠点」は、旅の活動範囲を示すうえで欠かせません。1か所に連泊するのか、日ごとに宿を変えるのかによって、観光できる範囲や移動時間が変わります。宿泊先の立地(駅近、海辺、市街地中心など)も書くと、読者は旅の利便性を判断できます。
さらに「旅のテーマ」も添えることで、記事全体の方向性が明確になります。例えば「美術館とカフェ巡りがテーマの週末旅行」「温泉と地元グルメを楽しむ癒やし旅」「世界遺産をめぐる歴史探訪」などです。テーマを提示すると、読者は自分の興味と照らし合わせて読み進めるかを判断しやすくなります。
このように旅の概要を詳細に描写すると、読者は記事の前提条件を理解しやすくなり、続く旅行記のエピソードや情報がより具体的に響くようになります。
行程とハイライト
旅行記で「旅行中の主な行程」をまとめる部分は、読者に旅の全体像を一目で理解してもらうための地図のような役割を果たします。ここを丁寧に作ると、記事全体の流れが明確になり、読者は「自分ならどんな順番で回るか」をイメージしやすくなります。
まず、日ごとに区切って書くことが基本です。1日目、2日目、3日目といった形で整理すると、旅の進行が時系列でわかりやすくなります。その際、それぞれの日のメインとなる活動や訪問地を簡潔に記します。たとえば「1日目は旧市街の街歩きと夜景鑑賞」「2日目は海沿いのドライブと地元市場での食べ歩き」「3日目は山頂ハイキングと温泉で締めくくり」といった具合です。
さらに、各日の行程には「見どころ」や「その日のハイライト」を短く添えると、読者の興味を引きます。例えば「1日目は歴史的建造物が並ぶ通りで建築美を堪能」「2日目は快晴の海を背景に撮った絶景写真が旅の一番の思い出」「3日目は紅葉に包まれた渓谷で癒やされた」など、感情や体験を簡単に付け加えるだけで、文章が印象的になります。
また、読者が実際に同じルートを参考にできるよう、移動の順序や時間配分の目安を盛り込むと実用性が高まります。「午前中に〇〇を見学→昼食後に□□へ移動→夕方は△△で過ごす」という流れを簡潔に書けば、モデルコースとしての価値が生まれます。
このように、旅行中の行程を短くまとめつつ各日の見どころを添えると、旅行記は読みやすく、かつ読者にとって参考になる内容になります。
スポット紹介(1スポットごとに1セクション)
旅行記のスポット紹介では、単に場所の名前や写真を載せるだけではなく、読者が「実際に行ってみたい」と思えるような情報と描写を組み合わせることが大切です。
まず「スポット名」は正式名称で記載し、可能であれば地域やエリア名も併せて書くと検索性が高まります。次に「アクセス方法」では、最寄り駅やバス停からの所要時間、車での行き方、駐車場の有無を明記します。「営業時間」と「料金」は最新情報を確認し、必要なら季節や曜日による違いも補足します。「滞在時間の目安」は実体験に基づいて書くと信頼性が増します。
体験の描写では、五感を使った表現を取り入れると臨場感が出ます。景色なら色や光の変化、音なら人々の話し声や自然の音、匂いなら花や食べ物の香り、温度なら風の冷たさや日差しの暖かさなどを具体的に描きます。さらに、その場所で起きた印象的な出来事や偶然の出会いなどを短く挟むと、読者は自分の旅と重ね合わせやすくなります。
加えて、混雑状況やおすすめの訪問時間帯を記すことで、実用性が高まります。「午前中は比較的空いている」「夕暮れ時が一番美しい」など具体的に書くと効果的です。写真撮影のポイントも有効で、「この角度から撮ると背景に〇〇が映り込む」「逆光になる午後はシルエットがきれい」などのアドバイスが読者の行動を後押しします。
このように、基本情報と体験描写、実用的な訪問アドバイスを一体化させることで、旅行記は読み物としてもガイドとしても価値が高くなります。
食事・カフェ・特産品
旅行記で飲食店や土産品を紹介する際は、「その土地ならでは」の魅力と実用的な情報を両立させることが重要です。
まず、店名は正式名称で記載し、場所も具体的に示します。駅や観光スポットからの距離や、徒歩・車での所要時間を添えると読者が訪れやすくなります。営業時間や定休日がわかれば加え、可能であれば予約の要否や混雑時間帯にも触れます。
注文したメニューは、料理名とともに特徴を描写します。見た目の色や盛り付け、香り、食感、温度、口に入れた瞬間の印象など、五感を使った表現を意識すると、読者の想像がふくらみます。例えば「外はサクサク、中はとろけるような甘さのあんこ」「湯気とともに立ち上る味噌の香りが食欲をそそる」などです。
価格帯は、料理や土産品が高級なのか手頃なのかを判断する基準になるため必ず明記します。単品価格やセット料金、ランチとディナーの違いなどがわかるとより親切です。
土産品の場合は、商品名やメーカー名だけでなく、素材や製造方法にも触れると特別感が増します。地元の特産品を使っている場合は、その由来や歴史、地域での食べ方も簡単に説明します。例えば「〇〇湾で獲れた新鮮な海老を使用」「江戸時代から続く老舗和菓子店の看板商品」などです。
さらに、地元ならではの食文化や食材を背景として紹介すると、単なるレビュー以上の価値が生まれます。「この地域では祝い事に〇〇を食べる習慣がある」「夏祭りの屋台でしか味わえない限定スイーツ」など、旅の文脈に沿った説明があると印象に残ります。
こうした情報と感覚的な描写を組み合わせることで、読者は「その場で食べてみたい」「お土産に買って帰りたい」と強く感じる記事になります。
宿泊先の紹介
旅行記で宿泊先を紹介する際は、読者が「ここに泊まるかどうか」を判断できるだけの情報を、簡潔かつ客観的にまとめることが大切です。
まず、宿泊先の正式名称を記載し、立地条件を具体的に説明します。最寄り駅やバス停からの距離、主要観光地へのアクセス、周辺環境(繁華街、海辺、山間部など)を明確にすると、旅の利便性が伝わります。
宿泊料金は、宿泊した日やシーズンによって異なるため、実際の金額とその時期を合わせて書くと参考になります。たとえば「平日1泊朝食付きで1人8,000円」「繁忙期料金で2人1室1泊15,000円」などです。
部屋の様子は、広さや間取り、ベッドや布団の寝心地、清潔感、窓からの景色などを具体的に描写します。設備は、客室内のアメニティ(シャンプー、スキンケア用品、Wi-Fi、冷蔵庫など)や館内施設(温泉、大浴場、ラウンジ、ジムなど)に触れます。
食事については、提供形式(ビュッフェ、懐石、コース料理など)、メニュー内容、味やボリューム、地元食材の使用状況を説明します。サービス面では、スタッフの対応、チェックイン・アウトのスムーズさ、荷物預かり、送迎サービスなどがあれば記載します。
最後に、良かった点と改善点を簡潔に書きます。良かった点は「清掃が行き届いていて快適」「スタッフが親切で観光情報も教えてくれた」など具体的に。改善点は「Wi-Fi速度が遅い」「部屋がやや暗い」「朝食メニューが少ない」など、事実ベースで簡潔に述べることで信頼性が高まります。
こうして情報を整理すれば、読者は宿泊先の全体像を短時間で把握でき、旅行計画に直結する有益なレビューになります。
旅の感想とおすすめポイント
旅行記の終盤で全体を振り返るパートは、単なる感想ではなく、読者にとって「旅の価値」を再確認させる役割を持ちます。ここでは、旅を通じて得られた印象や学びを簡潔にまとめると同時に、特におすすめできるスポットや体験を明示することで、記事全体の印象を強めます。
まず「旅の印象」は、風景や文化、人との交流など、最も心に残ったポイントを一つか二つに絞って書くと効果的です。例えば「海と空の青さが想像以上で、写真では伝えきれない迫力だった」「地元の人との何気ない会話が、旅の温かさを感じさせてくれた」など、感情が伝わる表現が望ましいです。
「学び」の部分では、その土地の歴史や文化に触れて得た知識や、自分の価値観の変化を記すと読み応えが出ます。例えば「古い町並みを歩きながら、かつての商人文化の豊かさを実感した」「海外の市場では値段交渉も文化の一部だと知った」などです。
次に「特におすすめできるスポットや体験」を明確にします。記事中で紹介した場所の中から一つか二つを選び、理由を添えます。「朝日に照らされる〇〇寺は静寂に包まれていて心が落ち着く」「△△ビーチでのシュノーケリングは魚の多さと透明度が別格だった」など、具体的かつ短くまとめると効果的です。
最後に「どんな人に向いている旅か」を示します。家族向け、カップル向け、アクティブ派、歴史好き、グルメ好きなど、ターゲット層を明確にすることで、読者は自分に合う旅かどうかを判断できます。例えば「体力に自信のある人には登山コースがおすすめ」「のんびり過ごしたい人は温泉と街歩きの組み合わせが最適」などです。
こうして印象・学び・おすすめ・対象層を整理すると、記事の締めくくりが情報的にも感情的にも充実し、読後感の良い旅行記になります。
実用情報
旅行記の「実用情報」パートは、読者が記事を読んだ直後に行動へ移しやすくするための重要な部分です。ここでは、旅の感想や体験談ではなく、計画や準備に直結する具体的な情報を整理して提供します。
まず「持って行くと便利な物」では、現地特有の事情を踏まえたアイテムを挙げます。例えば、山間部なら防寒具や雨具、海辺ならサンダルや防水ケース、都市観光ならモバイルバッテリーや折りたたみ傘など、目的地や季節に合わせた持ち物を具体的に書きます。
「服装」は季節や天候に応じたアドバイスが必要です。同じ地域でも昼夜の寒暖差が大きい場合や、屋外と屋内の温度差が激しい場合があります。例として「日中は半袖で快適だが、朝晩は上着が必要」「観光地は石畳が多いため歩きやすい靴がおすすめ」など、現地での過ごしやすさに直結する情報を盛り込みます。
「現地の天候」は、旅行時期ごとの傾向を簡潔にまとめると便利です。雨季や乾季、台風シーズン、花粉や黄砂の影響など、知っておくと行程や荷物の調整がしやすくなります。
「予算の目安」では、宿泊費、交通費、食費、観光施設の入場料、土産代などを合計し、おおよその総額を提示します。読者が同じような旅を計画する際の参考になります。
「事前予約の必要性」については、人気の観光スポットやアクティビティ、レストラン、交通機関(高速バス、観光列車など)が予約必須かどうかを明記します。さらに、予約方法や時期の目安も添えると行動しやすくなります。
このように、実用情報をまとめることで、旅行記は単なる読み物から「そのまま旅のガイドになる記事」に格上げされ、読者の信頼と滞在時間の増加につながります。
まとめ
旅行記の最後に書く「まとめ」は、記事全体を読み終えた読者の印象を決定づける重要な部分です。ここでは、旅の要点を短く整理しつつ、読者の感情を動かす一文で締めることを意識します。
まず、本文で紹介した内容を簡潔に振り返ります。訪れた地域の特徴、印象的だったスポットや体験、現地で得られた感情や学びを1〜2文でまとめます。この段階では詳細説明は避け、キーワードを押さえる程度にします。
その上で、読者の「行きたい」という気持ちを刺激する言葉を添えます。これは感覚的な表現が効果的です。例えば「朝日に照らされた古城のシルエットは、何度でも見たくなる美しさでした」「潮風と波音が作る静かな時間は、日常を忘れさせてくれます」など、写真や映像では伝えきれない魅力を強調します。
最後の一文は、呼びかけの形にすると読者の行動を促せます。例として「次の旅先に迷っているなら、ぜひ〇〇を訪れてみてください」「都会の喧騒から離れたいとき、〇〇は最高の癒やしを与えてくれます」などです。この一文があることで、読者は記事を読み終えた瞬間に目的地として意識しやすくなります。
この「要点整理+感覚的な魅力+行動を促す呼びかけ」の三要素を意識すれば、読後感の良い旅行記になり、再訪やシェアにもつながります。
この記事のまとめ
効率を求める現代において、旅行記すらタイムパフォーマンスを意識せねばならない時代になりました。竹田百合子のように気ままに綴る文章は美しいものの、そんな悠長な贅沢はもうできません。そこで本記事では、出発前から帰宅後まで、テンプレ化された構成と情報整理によって、誰でも同じ品質で旅行記を量産できる方法を提示しました。行間の余白や感傷は最小限に、読者が欲しい情報だけを最短で提供する。それが現代版旅行記の正しい姿です。

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